Q.関節リウマチって、どんな病気ですか?

図11 関節リウマチ患者さんの変形してしまった手指

A. 関節リウマチ(以下RA:Rheumatoid Arthritisの略)は多発性関節炎を主徴とする全身性自己免疫疾患で、進行すると関節が破壊され変形へと至ります(写真11)。

日本人の患者数は約70万人、女性に多く好発年齢は30歳~50歳と言われていますが、最近は高齢(60歳以上)で発症されるRA患者さんも増加しています。

Q.関節リウマチの原因は?

A.ある遺伝子を持つ人に、喫煙、歯周病、ウイルス感染、腸内細菌などの環境因子が作用して発症すると考えられていますが、明らかな原因はわかっていません。

Q.どのように治療するのですか?

A.RAによる関節破壊は従来考えられていたよりもずっと早く、発症初期(1年~2年)から始まることが明らかになりました。したがって、RAと診断されたらできるだけ早く治療を開始して関節破壊の進行を止める(構造的寛解)必要があります。

もちろん関節の痛みを止める(臨床的寛解)こと、身体機能を保つ(機能的寛解)ことも重要で、これら3つの寛解がRA治療の目標となります。RA治療には薬物治療、手術、リハビリテーション、基礎療法(患者さんへの教育など)の4本の柱があります。このページを読んでいただいていることが基礎療法の一つというわけです。

Q.薬の治療について教えてください。

A.RA治療の基本は薬物治療です。関節リウマチと診断したら内服薬であるメトトレキサート(商品名:リウマトレックス、メトレート)を第一選択薬として投与することが、欧州、アメリカ、日本などのリウマチ学会から推奨されています。

メトトレキサートはRA治療におけるアンカードラッグ(中心的薬剤)に位置付けられていてたいへん有効な薬ですが、いくつかの副作用も報告されており医師の管理下で慎重に使っていかなければいけません。なかでも気を付けなければならない副作用は、骨髄障害(白血球、血小板減少)、肺障害(薬剤性間質性肺炎)、腎障害、肝障害、感染症(肺炎、敗血症など)リンパ増殖性疾患(良性・悪性リンパ腫)などです。

また、妊婦さんや授乳中の女性には使用禁忌になっています。メトトレキサートが何らかの理由で使用できない患者さんには、昔から使われている従来型合成抗リウマチ薬(商品名:リマチル、アザルフィジン、プログラフ、ケアラムなど)を使用します。

Q.生物学的製剤という薬があると聞いたのですが?

A.メトトレキサートや従来型抗リウマチ薬を3~6か月使用しても治療目標に到達できないと判断したら、生物学的製剤の追加投与を考慮します。

RA患者さんの関節の中には、いくつかの炎症性サイトカインとよばれるタンパク質が過剰に存在していて、それらが関節破壊を引き起こします。生物学的製剤はこの炎症性サイトカインの中でも特に関節破壊に関与していると考えられているTNFα、IL-6などの働きを阻害したり、炎症性サイトカインを放出する細胞(T細胞)の働きを阻害したりする注射薬です。

現在わが国には、TNFα阻害薬としてレミケード、エンブレル、ヒュミラ、シンポニー、シムジア、IL-6阻害薬(受容体抗体薬)としてアクテムラ、ケブザラ、T細胞活性化阻害薬としてオレンシアの8種類の製剤が使用されています。患者さんの病態や様々なニーズに応じて主治医と患者さんがよく話し合い、最も適切な製剤を投与します。

生物学的製剤の中には自分で注射(自己注射)する薬もありますが、当クリニックでは研修を受けた看護師が丁寧に打ち方を指導しますので、たいていの患者さんは少し練習すれば自己注射が可能になります。生物学的製剤もメトトレキサートと同様に、あるいはメトトレキサート以上に有効性の高い薬ですが、やはり副作用には十分な注意が必要です。特に感染症には要注意で、重症化して死亡された例も報告されていますので、厳重な管理が必要です。万一副作用が発現した時には、速やかで適切な対応が不可欠です。

私たちのクリニックでは、副作用を早期発見し重症化を防ぐために、定期診察時には血液検査をはじめ必要な検査を必ず行って副作用の早期発見に努めています。血液検査の結果は翌日以降の確認になりますが、早く結果をお知りになりたい患者さんには、クリニックより電話でお知らせいたします。逆に患者さんが体に異変を感じた時は、電話でクリニックへお知らせいただくようお願いしています。こうした対応をきっちり行っていれば、メトトレキサートや生物学的製剤は安心して使用できる有効な薬剤です。

ただし、生物学的製剤は決して安価な薬ではないので、治療目標を達成できたら「薬を中止したい」または「休薬したい」と希望される患者さんもいらっしゃいます。しかし、症状が改善したからといって安易に休薬するとRAが再燃してしまう場合もあります。担当医とよく相談した上で、医師が可能と判断した場合に休薬するようにしましょう。

Q.生物学的製剤が効かない場合はどうするのですか?

A.ある生物学的製剤を使用しても治療目標が達成できない場合は、別な生物学的製剤に切り替えます。これをスイッチと呼びます。

それでも効果が得られない場合はさらに別な生物学的製剤にスイッチする場合もありますが、最近は生物学的製剤の代わりに分子標的型合成抗リウマチ薬を使用することもできるようになりました。わが国で承認されている分子標的型合成抗リウマチ薬はゼルヤンツとオルミエントという薬ですが、これは生物学的製剤とは異なり内服薬です。

患者さんによっては非常に効き目が良く、生物学的製剤でも治療目標を達成できなかった方が寛解や低疾患活動性に至る場合もあります。しかし、他の製剤と同様に副作用に対する厳重な注意が必要なことは言うまでもありません。

Q.RAは合併症が多いと聞いたことがあるのですが?

A.RA患者さんの死因を調べたある報告によれば、第1位は悪性新生物(いわゆる癌)、第2位が呼吸器障害と報告されています。致命的な感染症は呼吸器感染症が多いのでこれを加えると呼吸器合併症が死因としては最も多いかもしれません。したがって、呼吸器合併症には常に厳重な注意が必要です。咳、息切れ、発熱など疑わしい症状が出た時には、放置せずかかりつけの医療機関と連絡を取るようにしてください。

もう一つRAの合併症で多いのが骨粗鬆症です。2015年のリウマチ白書によるとRA患者さんの47%に骨粗鬆症の合併が認められました。ホームページの別項でも述べましたが、骨粗鬆症は自覚症状がないので、骨密度検査を受けていなければ脆弱性骨折(立った位置からの転倒など軽い外力でおきた骨折)を起こして初めて気がつかれることになります。

大腿骨近位部、脊椎、上腕骨近位部、橈骨遠位部の骨折を4大脆弱性骨折と呼んでいますが、中でも大腿骨近位部骨折はたとえ手術をしても受傷後1年で10%~20%の方が死亡するという報告もあります。死亡しないまでも、寝たきりになる患者さんが非常に多いのもこの骨折の特徴です。したがって、RA患者さんは検査を受けて骨粗鬆症が見つかったら、すぐに治療を開始することが大切です。治療の原則は薬物治療ですが、RA同様骨粗鬆症も有効な薬物を長期にわたって服薬することが大切です。

長期にわたる服薬が継続できるように、最近は日本骨粗鬆症学会認定の骨粗鬆症マネージャーという資格を有する様々な医療従事者が地域ぐるみの骨粗鬆症治療に取り組んでいます。

Q.RAの手術について教えてください。

図12 人工膝関節置換術後のX線写真
図13 関節リウマチによる外反母趾手術の術前(左)と術後(右)

A.RAに対する薬物治療がめざましく発展した今日でもなお手術を必要とするRA患者さんがいらっしゃいます。生物学的製剤が出現したばかりの頃、一時手術は減少しました。特に生物学的製剤出現前には最も多かった膝などの大関節に対する人工関節置換術(写真12)は減少しました。薬物治療の進歩に加え、より早期から治療介入される患者さんが増えたことが理由の一つと考えられます。

しかし、最近また手術が少しずつ増加しているという報告が聞かれるようになりました。かつての大関節に対する手術ではなく、手指や足趾などの小関節に対する手術(写真13)が増加傾向にあるためです。その理由として、薬物治療の発達に伴って生活の質が改善し、手指の機能や外観、足趾の変形や足裏の痛みなどに患者さんが関心を持つようになったこと、多くの強力な薬物が出現した今でも治療目標達成率が70%程度で、どうしても関節破壊が進行してしまう患者さんがいらっしゃることなどが考えられています。

Q.リハビリテーションについても教えてください。

A.RAは関節の病気ですから、リハビリテーション(体操や自助具、装具の活用)は大切です。関節の痛みが強い時(炎症活動期)には、関節を保護するための動かし方を学んだり関節可動域や筋力などを維持するための運動を学んだりします。薬物治療が効果を発揮し関節の痛みが軽快したら(非炎症活動期)、関節可動域を広げたり筋力を強化したりするための訓練を行います。また、すでに関節の変形が生じたり筋力低下が起こったりしている患者さんには、日常生活動作をサポートするための自助具(図14)や上肢装具、リウマチ靴などを処方します。

図14:自助具とその使用状況(2015年 日本リウマチ友の会「リウマチ白書」より)


以上、RAについてQ&A形式で解説させていただきました。すべてのRA患者さんに対して、有効かつ安全な治療を提供していくことが私たちリウマチ専門医の使命と考えています。上記以外にもご心配なことがありましたら、どうぞ遠慮なくご相談ください。

予防接種、各種検診、リハビリに関しましては、お電話もしくは直接ご来院時のご予約のみ受け付けております。