ロコモについて

運動器の障害のために移動機能の低下をきたした状態をロコモティブシンドローム(略称:ロコモ、日本語名:運動器症候群)といいます。2007年、日本整形外科学会に より提唱されました。 
 
運動器とは、人が自分の身体を自由に動かすために必要な器官のことで、骨、関節、軟骨、椎間板、筋肉、神経から構成されています。 このような運動器のいずれか、あるいは複数に障害が起こると、立ったり歩いたりする機能が低下します。 ご自分が、ロコモティブシンドロームかどうかは、ロコモ度テストで判定ができます。  
 
詳しくは、当クリニックの整形外科医にお尋ねください。当クリニック整形外科の野本医師は、日本整形外科学会のロコモアドバイスドクターhttp://locomo-joa.jp/suppoter/)です。 ロコモティブシンドロームを来す原因疾患には、以下のような疾患があります。    
 
骨の病気:骨粗鬆症と脆弱性骨折 
関節の病気:変形性関節症(特に多いのが変形性膝関節症) 
椎間板の病気:変形性脊椎症(特に多いのが変形性腰椎症) 
神経の病気:脊柱管狭窄症 
筋肉の病気:サルコペニア(加齢性筋肉減少症) 
 
これらの主な疾患について、解説させていただきます。

写真1 複数の椎体骨折(丸印)のために丸くなった背骨


写真2 大腿骨近位部骨折(○が骨折側です)

骨粗鬆症と脆弱性骨折

骨粗鬆症とは、骨の量(骨量)が減って骨が弱くなり、骨折しやすくなる病気です。 骨粗鬆症による骨折は、家の中での転倒など、ちょっとしたはずみでも起こります。

特に骨折しやすいところが、背骨(脊椎椎体骨折)、肩(上腕骨近位部骨折)、手首(橈骨遠位端骨折)、ももの付け根(大腿骨近位部骨折)です。 背骨に骨折が起こると背部痛や腰痛が生じ、複数の脊椎椎体骨折が起こると背骨の変形のために背中が丸くなったり身長が縮んだりします(写真1)。 また、大腿骨近位部骨折(写真2)が起こると歩くことができなくなります。手術を受けて一時的に歩行可能となっても、その後寝たきりになったり、認知症が進行してしまったりして生命予後を悪くする場合もあります。 こうした骨折を予防するためには、骨粗鬆症に対する治療がとても大切です。

適度な運動をして転ばないような筋力やバランス能力を維持すること、カルシウム、ビタミンD、タンパク質などの摂取ができるような食事をとること、禁煙、アルコール摂取を控えること、ビタミンDを増やすために日光浴をすることなどが大切です。

また、骨粗鬆症は骨折を起こさなければ自覚症状がないので、高齢の方は1年に1度は骨密度検査を受けて、もし骨粗鬆症と診断されたならば早めに薬による治療(飲み薬や注射などいろいろな薬があります)を開始することをお勧めします。

当クリニックでは、信頼度の高い骨密度測定(DXA法)が可能ですので、ご心配な方は是非お申し出ください。



変形性膝関節症

膝関節は骨、関節軟骨、靭帯、半月板などから構成されていますが、変形性膝関節症は軟骨が老化することにより発症します。年齢とともに関節軟骨が弾力性を失い、摩耗していきます。さらに進行すると、関節軟骨だけでなく骨にも摩耗が生じたり、骨が過剰に作られたりして膝が変形します。X線検査をすると、正常な膝(写真3)に比べて変形性膝関節症の膝(写真4)では軟骨の量を表す骨と骨の間の隙間が狭くなっています(関節裂隙狭小化)。また、過剰な骨(骨棘)が出現したり、膝全体の形がゆがんだりしていることも確認できます。 こうした関節の変形は、膝の外傷、過剰なスポーツや肉体労働、肥満など膝関節に過度の負担がかかることにより悪化します。

治療:変形性膝関節治療の治療には、保存的治療と手術治療があります。膝痛が軽度から中等度の患者様には、保存的治療が行われます。保存的治療は運動療法と薬物治療に分かれますが、まずは副作用のない運動療法を行います。当院でもはじめに、膝痛を予防したり改善したりする効果のある体操法を指導させていただきます(当クリニックの整形外科医 野本の著書※もあります)。薬物治療としては、内服や外用の鎮痛剤を処方させていただきます。膝関節内にヒアルロン酸などの薬剤を注射で投与する方法もあります。また、サポーターや装具が有効な場合もあります。患者様の病態やニーズに応じて治療法を選択させていただきます。

さまざまな保存的治療を行なっても痛みが改善しない重度の変形性膝関節症の患者様には、手術治療を検討させていただきます。手術治療の中で世界的に最も推奨されている方法は人工膝関節置換術ですが、患者様の病態によっては他の手術(骨切り手術や関節鏡視下手術=内視鏡手術)が適応される場合もあります。当クリニックの野本医師は2000例以上の人工膝関節置換術の経験がありますが、クリニックでは手術はできませんので、手術が必要な患者様には近隣の提携病院(けいゆう病院、済生会横浜市東部病院、横浜労災病院、横浜市民病院など)を紹介させていただきます。

変形性脊椎症

背骨の加齢により生じるもので、軽症なものは無症状のこともあります。脊椎は骨(椎体)と椎間板から構成されています(写真5)が、椎間板が加齢により変性(劣化)するとその異常な動きを止めるように骨棘(ほねのとげ)が形成されます(写真6)。変形が進んで高度になると、慢性の疼痛(頸椎なら頸部痛や肩こり、腰椎なら腰痛、臀部痛)や可動域制限が生じ、まれに神経根症状(頸椎の場合は上肢のしびれや痛み、腰椎の場合は下肢のしびれや痛み)を生じます。
また、脊椎の中の神経の通り道(脊柱管)が狭くなる(狭窄化)と脊柱管狭窄症となります。脊柱管狭窄症になると歩行すると下肢がしびれたり、重症の場合は尿の出が悪くなったりします。

治療:痛みに対しては、安静(コルセットなど)、薬物療法、理学療法(腰痛体操含む)などを行います。
神経根症状や脊柱管狭窄症の症状があれば手術を行う場合もあります。 手術が必要な方には、他の疾患同様、連携病院を紹介させていただきます。

サルコペニア

サルコペニアとは、加齢や疾患により筋肉量が減少することで、全身の筋力低下が起こります。加齢が原因で起こるものを「一次性サルコペニア」、加齢以外に原因があるものを「二次性サルコペニア」といいます。 ヒトの筋肉の量は30歳代から年間1~2%ずつ減少し、80歳ころまでには体の約30%の筋肉が失われます。こうして、高齢になると筋力が低下し、身体機能障害、Quality Of Life : QOL(生活の質)の低下が起こり、死亡リスクが高まります。 予防:サルコペニアの予防には運動と栄養が大切です。運動に関しては歩行や筋力訓練が、栄養に関してはタンパク質やアミノ酸が多く含まれる食事を摂取することが大切です。運動習慣と栄養補給にこころがける生活習慣を身に着け、サルコペニアを予防するようにしましょう。