【第9回】脛骨疲労骨折について

本コラムでは、当クリニックを受診された患者様が経験されたスポーツ外傷や障害について、その病態や治療、治るまでの期間などについて解説させていただきます。 第9回は、脛骨疲労骨折です。

はじめに

疲労骨折とは、1回の大きな外力でおこる通常の骨折とは異なり、同じ部位への繰り返しの比較的小さな外力で起こる骨折の事です。

スポーツ選手が短期集中トレーニングを行った場合などに生じることがあります。また、学生の部活動においては、受験勉強が終わって入学した子が運動部に入りたての時期にも時々見受けられます。 好発部位は足の中足骨(足背の骨)、脛骨(すねの骨)、肋骨などです。

足やすねの骨はランニングを伴うスポーツで多く発生しますし、肋骨はゴルフ練習など体繰り返し捻じる動作で時々発生します。

当クリニックでは最近高校女子バスケットボール選手の脛骨疲労骨折例を経験しました。
女子バスケットボール(写真1)は突き指(スポーツドクターコラム第5回参照)、足首捻挫(スポーツドクターコラム第7回参照)、膝靭帯損傷などいろいろな部位の外傷が多いスポーツの一つですが、脛骨疲労骨折もそれらの怪我の中に数えられます

(写真1)女子バスケットボール:膝(赤→)や足首(青→)の怪我も多いスポーツです。

今回のケースは、高校部活で学年が上がり練習量が増えたことも一つの原因と考えられますが、疲労骨折が発生するにはいくつかの要因が考えられます。今回は脛骨疲労骨折について、発生要因を含めて解説させていただきます。

発生要因

環境要因

運動強度の急激な変化
体の一部分への集中的な負荷
不適切なシューズ
練習場の床の問題(固すぎ、柔らかすぎ)

選手側の要因

筋力不足
アンバランスな筋力
未熟な技術

体の柔軟性の不足

骨が弱いこと(骨粗鬆症、栄養不足)
女性の場合、ホルモンバランスの乱れなど、多くの要因が考えられます。

症状

発症初期は運動時にすねの痛みを自覚しますが、多くの場合日常生活では痛みはありません。 しかし、無理してトレーニングや試合を続けると痛みが強くなり、時には歩行できないくらいの痛みになることもあります。

診断

疲労骨折を疑ったらX線は必ず撮影しますが、発症初期は普通のX線では骨折を確認することが困難な場合もあります(写真1)。

(写真1)単純X線:16歳、女子バスケットボール選手。骨折ははっきりしません。

多くの場合MRIで骨折を確認できます(写真2)。
当クリニックからは、けいゆう病院のMRI検査をインターネット予約することが可能です。

(写真2)MRI:骨が黒く映る条件で撮影(T2強調画像)、骨の中で白く見える部位が疲労骨折した部位(赤→)

治療

疲労骨折が確認されたら、スポーツ活動は休止します。 骨折の程度により休養期間はまちまちですが、一般的に早期に診断されれば短期間の休養で骨は癒合し(2から3か月)痛みもなくなります。 逆に完全骨折に至った例や、骨折の部位(脛骨の中央部分の疲労骨折は治りにくい)によっては難治性となり、手術が必要になる場合があります。

予防

前述した発生要因に対する対策が、とりもなおさず疲労骨折発生予防になります。

環境対策

運動強度の急激な変化に気を付ける
体の一部分への集中的な負荷を避ける 適切なシューズを着用する
練習場の床(固すぎ、柔らかすぎ)に注意する

選手側の対策

筋力強化につとめる
アンバランスな筋力強化にならないようにする
技術を磨く
体の柔軟性のトレーニングも行う
栄養に注意する(特にカルシウム、タンパク質)
中高年女性の場合、骨密度の計測を行い必要ならば治療を受ける
などの対策を行って、疲労骨折を防ぎましょう。