【第8回】膝内側側副靭帯損傷について

本コラムでは、当クリニックを受診された患者様が経験されたスポーツ外傷や障害について、
その病態や治療、治るまでの期間などについて解説させていただきます。
第8回は、膝内側側副靭帯損傷を取り上げます。

はじめに

膝内側側副靭帯(以下MCL)損傷は膝靭帯損傷の中で最も頻度が高い損傷です。
スポーツのほかに交通外傷、労働災害などの高エネルギー外傷、日常生活中の転倒などでも起きることがあります。

受傷機転としては、例えばラグビー、アメリカンフットボール、レスリング、柔道、アイスホッケーのような接触を伴うスポーツ中に、膝の外側から直接大きな力が加えられて発生する場合と、スキー、体操競技、陸上競技、サッカーなどの際に、急激な減速や方向転換、またジャンプして着地をしようとして膝の外側から力がかかり受傷する場合があげられます。

当クリニックでは最近ハンドボール選手の例を経験しました。
ハンドボールはスカイプレーというジャンプしての華麗なシュートが見どころの一つですが(写真1)、接触プレーも多く怪我の多いスポーツのひとつです。


今回は、膝MCL損傷について解説したいと思います。

MCLの解剖

MCLは膝関節の内側において、大腿骨(太ももの骨)と脛骨(すねの骨)をつないでいる靭帯です。

MCL損傷の診断と評価

MCL損傷を受傷した患者さんは膝関節内側の痛みを訴えます。
靭帯断裂部からの内出血のため、膝の内側が腫れます。

痛みや腫れのために膝関節の動きが制限されますが、特に完全に膝を伸ばすことができなくなります。膝を完全に伸ばそうとすると、損傷したMCLが引き延ばされるからです。

本損傷を診断するには、まずMCLに沿って圧痛の有無を調べます(少し痛みを伴う診察になります)。膝関節に液状の血がたまっている場合には十字靭帯損傷を合併している可能性が高いので、MCLだけでなく前十字靭帯や後十字靭帯損傷を念頭に置いて診察します。  

MCL損傷に対する治療方針を決定する上で重要なのが損傷の程度です。
膝MCL損傷も足関節捻挫と同様に、損傷の程度によって1~3度に分類されます。

1度:靭帯が伸びた程度の損傷
2度:靭帯の部分的な断裂
3度:靭帯の完全断裂

靭帯は骨ではありませんが、X線検査は靭帯の骨への付着部の骨折(裂離骨折)やその他の骨の外傷を除外するために必ず必要な検査です。 膝関節がどのくらい不安定かを定量的に表現し記録を残すために、ストレスX線といって受傷時に受けた外力と同じ方向の外力を膝に加えて骨がどのくらいずれるかを計測する検査もあります。

MRIは正確な損傷部位の診断、合併する他の靭帯損傷や半月板損傷を診断するには極めて有用な検査ですが(写真2)、受診された患者さんがすぐに受けられるとは限りません。 超音波(エコー)検査は損傷部位の確認には有用な場合もありますが、損傷程度を評価するには適していません(写真3)。

(写真2)MRI:MCLの大腿骨付着部での損傷(赤矢印)MCL(黄矢印)(岩下孝粋、野本 聡:臨床スポーツ医学2015;32:850-853より)
(写真3)自院の症例:ハンドボール中に受傷した17歳、男性の超音波(エコー)検査: 損傷の有無は確認できます

MCL損傷に対する治療

MCL損傷と診断したら前述した分類によって損傷の程度を評価した上で治療方針を決定します。

1度損傷

膝はギプスなどで固定する必要はなく、むしろ関節が固くならないように、膝曲げ訓練を行います。歩行も許可します。さらに大腿の筋力低下を予防するための筋力強化訓練を行います。その後、膝の曲がりと筋力が健側と同等レベルまで改善したと判断したら、スポーツ復帰を許可します。

2度損傷

1度と異なり靭帯の一部が断裂しているので不安定性が強く出ます。
したがって2度損傷に対しては、膝装具(図1)を装着していただきます。
(図1)MCL損傷治療用膝装具の1例(岩下孝粋、野本 聡:臨床スポーツ医学2015;32:850-853より)

受傷時に痛みが強く膝を動かすのが困難な場合には、1~2週間、ギプスやニーブレースという装具を装着して膝を伸ばした状態で固定します。その後、前述した膝装具を装着してリハビリを開始します。

受傷後3週を経過し痛みが改善したらリハビリを強化しますが、膝装具は一般的には6週間以上装着します。膝の曲がりと不安定性が健側と同等レベルまで改善したらスポーツ復帰を許可します。

3度損傷

3度損傷に対しても原則的には保存的治療を行います。
ただし、3度損傷は十字靭帯損傷を合併している場合が多く、特に前十字靭帯損傷を合併すると手術が必要になる場合が多いので注意が必要です。

受傷初期はギプスやニーブレースなどを装着します。
歩行は許可し、痛みがある程度軽くなったら、MCLに無理な力がかからない様に注意しながらリハビリを開始します。以後は1~2度損傷と同様にスポーツ復帰を目指します。