【第6回】膝のランニング障害について

本コラムでは、当クリニックを受診された患者様が経験されたスポーツ外傷や障害について、その病態や治療、治るまでの期間などについて解説させていただきます。

第6回は、ランニングを取り上げます。

近年、中高年の健康志向の高まりとともにランニング人口が増えています。

ランニングは手軽に出来て、健康増進にも大変良いスポーツですが、走りすぎると膝、すね、足の裏などに痛みが出ることがあります。

今回は膝のランニング障害をとりあげます。

膝のランニング障害

3つの病態

ランニング中に出現する膝の痛みは、部位によって3つの病態に分けられます。
その部位というのは、膝の内側、外側、そして前面です。図1を参照してください。

(1)大腿四頭筋腱付着部炎(ジャンパー膝) (2)膝蓋腱炎(ジャンパー膝) (3)鵞足炎 (4)腸脛靭帯炎(ランナー膝)
(図1)膝のランニング障害で痛む部位(図は日本整形外科学会 症状病気を調べるより引用)


膝の内側に痛みが出た時は、鵞足炎(図1③)といって膝内側の腱の炎症が最も考えられます。
しかし、高齢者の場合は、膝内側の変形性関節症の場合もあります。

膝の外側に痛みが出た時は、膝外側にある腸脛靭帯の炎症が最も考えられます。
この腸脛靭帯炎(図1④)は膝のランニング障害では最も頻繁にみられるので、ランナー膝(Runner’s Knee)という別名もあるくらいです。

もう一つの病態は、膝の前面の痛みです。

膝蓋骨(膝のお皿と言われる骨)の上下に痛みが出ます。
大腿四頭筋腱付着部炎(図1①)や膝蓋腱炎(図1②)で、これらの膝痛はジャンプの多い競技でみられることが多いので、ジャンパー膝(Jumper’s Knee)という別名があります。

診断

腱や靭帯の炎症は膝の診察だけでおおむね診断はつきますが、超音波検査が役に立つことがあります。
ただ、高齢の方は変形性膝関節症が原因の場合もありますので、X線検査も必要です。

治療

まずは、ランニングを休むことです。消炎鎮痛効果のある塗り薬や貼り薬も良いでしょう。
痛みが軽くなったら、腱や靭帯のストレッチ(図2)を十分に行います。
ストレッチ痛、歩行時痛、階段昇降時痛などがなくなったら、短時間からランニングを開始します。
(図2)膝周囲の筋肉や腱、靭帯のストレッチ(図は日本整形外科学会 症状病気を調べるより引用)

予防

鵞足炎は膝の内側と裏側、腸脛靭帯炎は膝の外側、ジャンパー膝は膝の前面を十分にストレッチすること、大腿や下腿の筋力を鍛えること、適切なランニング量を見極めること、自分の足に合ったランニングシューズを選ぶこと、正しいランニングフォームで走ることなどが予防になると思われます。

ランニングシューズの選択、正しいランニングフォームの詳細はインターネットなどを参照してください。

当クリニックを受診された膝のランニング障害を3例提示します。
症例1:58歳、男性 
1か月に200km走ったのちに膝の内側に痛みが出現、エコー検査(写真1)の結果、鵞足炎と診断しました。ランニングの量を減らすようアドバイスさせていただきました。 (写真1)右膝鵞足炎のエコー所見(赤い部分が炎症部位:血流シグナル)
症例2:34歳、男性
東京マラソン後に 膝の前面と外側に痛みが出現しました。普段はバスケットボールをしている方です。
一つの膝に腸脛靭帯炎(ランナー膝)と膝蓋靭帯炎(ジャンパー膝)が合併していました。

典型的なランニング障害とジャンピング障害と言っていいでしょう。
十分なストレッチを行うよう指導いたしました。
症例3:24歳、男性
東京マラソンの後に、両膝に痛みが出現しましたが、左右違う部分に痛みがありました。
右膝は膝の内側に、左膝は膝の外側に痛みを訴えていました。
この方は、ずっと道路の左端を走り続けていたそうです。

一般的に、道路の端は左側が低く右側が高くなっています。
そこを長時間走ると、右膝は内側に、左膝は外側にストレスがかかります(写真2)。

そのため右膝は鵞足に、左膝は腸脛靭帯にストレスがかかって左右別々な病態が発症した可能性があります。この方には、道路の左端だけでなく、平らな中央寄りや時には道路の右端を走るよう指導させていただきました。
(図2)一般的に道路は左側が低いので、長時間走っていると左膝は外側にストレスがかかりやすい。
一方、右膝は内側が低い側になるので内側にストレスがかかりやすい。


私も2018年の東京マラソンを走りましたが、35㎞過ぎに腸脛靭帯炎を発症しました。
最後は鎮痛剤を塗り込みながらの苦しいランでしたが、何とか完走することができました。
ゴールすると痛みが吹っ飛び、また走りたくなるのが不思議ですね(写真3)。

(写真3)野本医師、東京マラソン完走