【第5回】突き指について

本コラムでは、当クリニックを受診された患者様が経験されたスポーツ外傷や障害について、
その病態や治療、治るまでの期間などについて解説させていただきます。

第5回は、球技などでよく受傷するいわゆる「突き指」についてです。

皆さんの中にはたかが突き指と思って放置して、
意外な後遺症に悩んでいらっしゃる方はいませんか?

そうなんです。たかが突き指と思っても、決して侮れない外傷が起きているかもしれません。

「たかが突き指、されど突き指」
今回は当クリニックで取り扱ったいろいろな突き指についてのお話です。

突き指とは

突き指は、指先に強く物が当たるなどして腱や関節、骨などを傷める怪我の総称の事です。突き指の中には、捻挫の他に腱断裂や骨折、脱臼、脱臼骨折などいろいろな外傷が含まれていますので、ちゃんと治すには整形外科を受診してX線検査などを受けて、どのような外傷なのか正確な診断をしてもらわなければなりません。

いろいろな突き指

当科を受診された突き指の例を提示します。

1. バスケットボール中に受傷した小学生の例
X線撮影をして詳細に検討しましたが、骨折はなく(写真1)、捻挫と診断しました。短期間の固定後、自然治癒が期待できる外傷でした。

ところで、(写真1)で骨折のように見える線(→)は骨端線という子供の骨に必ず認められる所見です。一般の方には骨折の線と紛らわしい場合がありますが、骨折ではありません。

(写真1)骨折無し、捻挫(→は骨端線)

しかし、骨端線部分で骨折を起こす例もあります。骨端線損傷といって、初期治療をきちんとしないと後に厄介な後遺症を残す場合があります。

(写真2)の小学生の例は、骨端線損傷を起こしており、正確に整復しておかないとクロスフィンガーといって手を握ったときに指がクロスしてしまう後遺症が残ってしまします。

また、骨の成長に大切な骨端線の損傷なので成長障害も心配です。この症例は受傷から日数が経っていたので、手外科専門医を紹介させていただきました。


(写真2)骨端線損傷 骨端線のところで指が曲がり捻じれてしまっています。(本来は赤矢印の方向に指がなければいけません) この怪我に対しては正確な整復をしないとクロスフィンガーの他に成長障害の後遺症が残ります。

2. フットサルでゴレイロ(サッカーでいうゴールキーパーのこと)をしていて、シュートを防ごうとして受傷した成人例
X線検査で骨折(中節骨骨折)が判明しました(写真3→)。しかし、保存的治療で治癒が期待できる外傷でしたので一定期間固定した後、現在は指を曲げるためのリハビリ中です。

(写真3)中節骨骨折(→)があるが、転位(ずれ)は少ない
3. 球技ではなく障害物競走中に受傷した成人例
X線検査で骨折(末節骨骨折)が判明しました。小さな骨折のように見えますが、骨片は伸筋腱という腱が付いていて常に矢印方向に引っ張られ、外固定しても小骨片がもとの位置に戻ることはありません(写真4)。

この症例は、病院を紹介させていただき骨接合するための手術を受けてもらいました。手術結果は良好でしたが(写真5)、もし放置していたらこの指は第1関節(正確にはDIP関節といいます)が一生自力で伸ばせない指(槌指変形またはマレット指変形)になっていたでしょう。


(写真4)指の先端の末節骨の骨折です。骨折してA(小骨片)とB(末節骨)が離れてしまいました。小さなA骨片には伸筋腱が付いていて、指を伸ばそうとすると赤矢印の方向に引っ張られます。


(写真5)A骨片をBの元あった位置に整復し、鋼線(写真の2本の白い線)で一時的に固定。A骨片がBに癒合したと判断したら鋼線を抜去します。

このように、一口に突き指と言ってもその病態はいろいろです。結果的に放置して治癒する突き指もありますが、手術をしなければ一生の後遺症を残す突き指もあります。スポーツで手指の怪我をした時は、たかが突き指と甘く見ないで、なるべく早期に整形外科を受診されることをおすすめします。