【第4回】アキレス腱断裂について

スポーツ外傷と障害

本コラムでは、当クリニックを受診された患者様が経験されたスポーツ外傷や障害について、その病態や治療、治るまでの期間などについて解説させていただきます。
第4回は、中高年のレクリエーションスポーツ中に頻回に遭遇するアキレス腱断裂についてです。

アキレス腱断裂

頻度、原因

アキレス腱断裂は非常に発症頻度の高いスポーツ外傷です。欧米での発生数は人口10万人当たり6.3人から37.3人との報告がありますが、近年は中高年者のスポーツ志向の上昇に伴って増えている外傷です。

スポーツ種目の中ではバレーボール、サッカーなどの球技やバドミントン、テニスなどラケット競技での発生が多いといわれています。

当クリニックでは最近フットサルでの受傷例を経験しました。
フットサルは1チーム5人で行う小さなサッカーのようなスポーツですが、サッカーよりも手軽にできるため少年や女子、また中高年者の競技人口が増加傾向にあります。

中高年者は若年者に比較するとアキレス腱が変性(老化で腱が劣化すること)していることが多く、これが断裂の基盤になっていると考えられています。 変性した腱にダッシュ、ストップ、ジャンプ、ターンなどの急激な力が加わることで断裂が起こります。

症状

患者さんは、アキレス腱断裂を受傷した時の状況を、「アキレス腱部を後ろから棒でたたかれたと思った」「ブチっという切れた音を自覚した」などと表現されます。アキレス腱が切れても必ずしも歩行不能になるわけではありません。

診断

アキレス腱部に陥凹があり、受傷した脚でつま先立ちすることができない、ふくらはぎを握るテスト(Simmond’s , Thompson test)で足首が動かないなどの臨床所見から診断可能ですが、X線や超音波検査、MRIが診断の補助として役立ちます。

アキレス腱は骨ではありませんが、X線で特徴的な皮膚の形や脂肪組織の形で断裂を予想することが可能ですし、超音波検査やMRIならアキレス腱そのものを描出することができます。

特に超音波検査は治療中のアキレス腱の修復状態も見ることができるのでとても有用です(写真1a,b)。

(写真1a)断裂したアキレス腱
(写真1b)修復途中のアキレス腱

治療

治療には大きく分けて手術と保存的治療の2つの方法があります。

手術は保存的治療に比較して、術後早期に運動療法が開始でき、そのために保存的治療よりも早く日常生活やスポーツ活動が可能になるという報告が多いので、スポーツ選手、愛好家、運動部の方などにはお勧めです。しかし、手術をすると当然手術瘢痕(手術の傷跡)が残りますし、術後に神経損傷や感染などの合併症が起こることもあります。

(写真2)アキレス腱断裂治療用装具

一方、保存的治療はギプスや装具(写真2)を約2か月間にわたって装着、その後慎重にリハビリテーションを行います。断裂した腱を直接縫合しているわけではないので再断裂には十分な注意が必要ですし、手術よりも再断裂が多いことがわかっています。

保存的治療を選択した場合、順調に治癒したとしてスポーツ活動の再開までには6か月から9か月かかります。

予防

アキレス腱断裂者の3分の2はウォーミングアップを行っていたが、ストレッチングをした人はその10分の1だったという報告があることから、スポーツ前には十分アキレス腱ストレッチを行うことをお勧めします。私もゲームに入る前には、アキレス腱ストレッチを入念に行ってフットサルを楽しんでいます(写真3)。

Fahlström M, Björnstig U, Lorentzon R. Acute Achilles tendon rupture in badminton players. Am J Sports Med. 1998;26(3):467-70.

(写真3)2008年青葉区フットサルリーグ(30歳以上)で優勝した当時の野本医師(矢印)