【第1回】スポーツ中の筋肉の外傷について

スポーツ外傷と障害

本コラムでは、当クリニックを受診された患者様が経験されたスポーツ外傷や障害について、その病態や治療、治るまでの期間などについて解説させていただきます。 第1回は、スポーツ中の筋肉の外傷についてです。

筋肉の外傷

筋肉の外傷にはいろいろな種類がありますが、自分の筋力で筋肉を損傷してしまう外傷(自家筋力による外傷)外から筋肉に力が加わって筋肉を損傷する外傷に分類することができます。

自家筋力によるもの

こむら返り

こむら返りとは、強く収縮した筋肉がそのまま固まってしまうことで、好発部位はふくらはぎの筋肉(腓腹筋)です。医学用語では痙攣(けいれん)といいます。激しい運動中だけでなく、睡眠中にも起こることがあります。

治療:こむら返りが起きてしまったら、足趾をひっぱったり膝を曲げ伸ばししたりするとおさまります。
予防:運動前後のストレッチや十分な水分補給が大切です。芍薬甘草湯などの薬が有効な場合もあります。

肉離れ(筋断裂)

急激に筋肉が収縮した場合に、自家筋力に筋肉の線維が負けて引き離されたときに肉離れが起こります。大腿の裏側の筋肉(ハムストリング)や下腿のうしろの筋肉(腓腹筋)が好発部位です。筋肉は腱に移行して骨に付着していますが、強い自家筋力が働くと腱が切れる場合もあります(例:アキレス腱断裂)。急にダッシュした場合やテニスのサーブなどでよく起こります。

診断:診断は症状から比較的容易に行うことができますが、超音波による画像診断(写真1)が有効な場合もあります。


(写真1)肉離れ(腓腹筋断裂)の超音波所見

治療:受傷から間もない時期は、安静(Rest)、冷却(Icing)、圧迫(Compression)、挙上(Elevation)のRICE処置を行います。消炎鎮痛効果のある外用薬も有効です。その後、受傷した筋肉のストレッチや筋力強化などを徐々に行っていきます。回復には通常、数週間かかります。


スポーツ復帰:本格的にスポーツに復帰する場合は、ストレッチ痛がないか、筋力が十分に回復したかなどをチェックしてからにしましょう。スポーツ復帰が早すぎると、再発して結局はスポーツ復帰が遅れることになります。

外からの力によるもの

筋挫傷

鈍的な外力によって筋肉が損傷し、筋肉内に出血が起こる怪我が筋挫傷です。格闘技やサッカー、ラグビーなどのコンタクトスポーツでよく起こります。 激しい痛みと腫れが起こります。好発部位は大腿前面で受傷後数日間は、歩行が困難な場合もあります。

治療:受傷後数日間は、RICE処置を行います。その後、リハビリテーションを行って膝や足などの関節の動きを回復させるようにします。

筋肉の外傷はほとんどの例が保存的治療で治癒し、手術を必要とする例は極めてまれです(アキレス腱断裂など腱の外傷は手術を必要とすることがまれではありません)。しかし、以下のような症状が出現した場合(写真2.3参照)は、コンパートメント症候群と呼ばれれる重大な合併症が起きた可能性があります。


(写真2)コンパートメント症候群の左下腿:高度な腫脹

(写真3)知覚脱失(赤塗)と知覚鈍麻(斜線)を認めた
  1. 我慢できない激しい痛み、特に足趾や足首を動かした時に増強(ストレッチペイン)
  2. 痛みのある部位の知覚障害や運動麻痺
  3. 強い腫れや皮膚の水疱など

このような症状を認めた時は、至急かかりつけの医療機関に連絡するか、夜間休日の場合は救急病院を受診してください。緊急手術(筋膜切開)を行わないと、筋肉や神経が阻血(血流が足りない状態)性壊死を起こして重大な後遺障害を残す場合があります(写真4)。


(写真4)コンパートメント症候群の後遺症(阻血性壊死)のため廃用となった下腿
(野本 聡ら:日本損害保険協会研究コーススライドより引用)