【第17回】テニス肘

本コラムでは、当クリニックを受診された患者様が経験されたスポーツ外傷や障害について、その病態や治療、治るまでの期間などについて解説させていただいております。

2019年は年始から、サッカーアジアカップ(写真1)、テニス全豪オープン(写真2)で日本人選手が順調な勝ち上がりを見せていますね。

サッカーについては昨年フットボーラーズアンクルを始めとして、色々な疾患や外傷を紹介させていただきました。

そこで、本年最初のスポーツドクターコラム(第17回)は、テニス肘を取り上げようと思います。

(写真1)サッカーアジアカップ

(写真2)テニス全豪オープン

頻度、原因

テニス肘の整形外科的正式病名は上腕骨外側上顆炎といわれ、中高年に好発します。
肘の外側に痛みが発現します。明らかな男女差はありません。

テニス肘と言われるだけあって、テニス選手における本疾患の発生頻度は比較的高率で30~50%と言われていますが、テニス以外にも雑巾を絞った時や重量物の運搬やキーボード操作を長時間行った後などにも発症することが知られています(図1)。


(図1)日本整形外科学会HP 症状・病気をしらべるより

病態

肘の外側、厳密には上腕骨の外側の外側上顆という部位には指や手首を伸ばす筋肉が腱となってくっついています(図2)。

(図2)日本整形外科学会HP 症状・病気をしらべるより
①長橈側手根伸筋:手首(手関節)を伸ばす働きをします。
②短橈側手根伸筋:同様に手首を伸ばす働きをします。
③総指伸筋:指を伸ばす働きをします。

その中でも短橈側手根筋の腱は他の筋肉の腱よりも薄くできていて一番痛みが出やすいと言われています。手首や指を伸ばす動作を続けていると、薄い腱が部分断裂を起こすことがあります。その腱が修復しないうちに繰り返し力が加えられると、慢性的な炎症が起こり、痛みが出現します。

若い人よりも筋肉や腱が老化して弱くなった中高年以降の人に多く見られるのはこうした理由からと思われます。

また、実際にテニスプレーヤーを対象にテニス肘を調べたある調査結果によれば、子供の時からテニスをしている人よりも30歳以降に始めた人に多く、週3回以上テニスをする人に多かったという結果も報告されています。

診断

テニス肘を診断するには、外側上顆を指で押してみて圧痛があるかどうかがポイントになります。
その他、肘を伸ばした状態で手首を手の甲側に持ち上げようとした時に、医師が手の甲に抵抗を加えると外側上顆に痛みが誘発されるテストなどで診断することができます。

テニス肘は腱の炎症ですから、通常レントゲン検査では骨の異常が見つかることはほとんどありません(写真3)。

(写真3)矢印が外側上顆ですが、レントゲンでは異常を認めません。

しかし、テニス肘と似たような症状でも、時には野球肘(離断性骨軟骨炎)や変形性肘関節症のようにレントゲン検査で診断できる病気の場合もあるので当クリニックでは原則的にレントゲン検査をさせていただきます。

治療

保存的治療として、ストレッチ、前腕の筋力強化、テニス肘用のバンド(テニスエルボーバンド)の着用(写真3)、消炎鎮痛剤(特に塗り薬や貼り薬などの外用剤)、痛いところへのステロイド注射、体外衝撃波など多くの治療が試されていますが、いずれの治療法も効果は一定ではありません(効く人もいますが、効かない人もいます)。

(写真3)テニスエルボーサポーター

当院でもテニス肘の患者様には上記の治療を組み合わせて処方しています。

しかし残念なことに、最近、テニス肘の保存的治療の効果は何も治療しなかった人に比べて長期的にはほとんど変わりがなかったことが米国のハーバード大学から発表されました1)。
この論文には、ほとんどのテニス肘は自然に治ることが示唆されたとして、経過観察のみで良いと記されています。

しかし、実臨床では、テニス肘の患者さんを放っておくことはせず、色々な治療が行われ短期的には一定の効果をあげているのが現状ではないかと思います。

1)Lian J. et al. Am J Sports Med. 2018 Oct 31.

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