【第14回】え、どこが折れてるの?わかりにくい小児の骨折について

本コラムでは、当クリニックを受診された患者様が経験されたスポーツ外傷や障害について、
その病態や治療、治るまでの期間などについて解説させていただきます。

第14回は、夏休みに入ってお子様たちが多くご来院されましたが、
その中から骨折、とりわけ子供に特有の骨折についてとりあげたいと思います。

骨折といいましても、当院は大きな病院ではないので、腕や太ももやすねなどがボキッと折れるような激しい骨折、すなわちレントゲン写真を撮ると誰が見ても明らかな骨折といった症例はほとんど来院されません。

子どもたちがスポーツ中や遊びの中で転倒したり突き指したりして受傷した怪我の中に、レントゲン写真を見てもお父さんお母さんたちには非常にわかりにくい骨折があります。

今回は、そうした小児特有の「え、どこが折れてるの?」と言いたくなるわかりにくい骨折について、実際の症例を提示させていただきながら解説させていただきます。


症例1:1例目は転倒して左手をついてから手首近くの前腕の痛みを訴えて受診された8歳の女子です。手指は動かせるし、明らかな腫脹はありませんでしたが、痛みが強かったのでX線検査を行いました(写真1)。

(写真1)8歳、女子、左前腕:橈骨(前腕の太い方の骨)→部に注意
前腕の太い方の骨、橈骨の→部に骨折があります。
「え?どこが?」と思われるかもしれません。

折れていると思ってX線写真を見てもそのような部位はありません。
ただ、→部は骨が隆起して(ふくらんで)見えます。
これを正に隆起骨折とよび、小児特有ではありますが立派な骨折です。

成長過程の骨には弾力があるために、このような形態の骨折が起こることがあるのです。
骨がしっかりするまでギプス固定をします。

1か月程度で骨がしっかりすれば、ギプスを外すことができます。
通常、後遺症は残りません。

症例2:2例目も8歳、女子の例です。

クラシックバレエをされているお嬢さんが、転倒して左の肘を傷めました。
2日間痛みを我慢されていたようですが、痛みが引かないので当院に来院されました。
X線検査をしたところ、写真2のような所見が認められました。

肘関節付近のX線写真ですが、前腕の2本の骨のうち、写真で左側に写っている尺骨という骨が骨折しています。骨折といっても、完全にボッキリ折れているのではなく、黄色→部は一部つながっているようにも見えます。
このような骨折を若木骨折といいます。

症例1の隆起骨折とは形態が違いますが、やはり成長過程の骨には弾力があるためにこうした骨折の形になることもあります。
この子も3週間のギプス固定をしたのち、骨折は治癒しました。
後遺症の心配もありません。

(写真1)8歳、女子、左肘関節近くでの前腕の骨、尺骨に骨折が見られます(赤→)が、つながっているようにも見える箇所(黄→)もあります。このような骨折を若木骨折といいます。
症例3:3例目は10歳、女子、遊んでいて転倒して受傷しました。
突き指ということで受診していただいたようですが、右中指の骨が骨端線損傷という小児特有の骨折を起こしていました。

骨端線というのは骨が成長している部位です(写真3:青→の線状に見える部分)。
ここに損傷を受けると骨が成長障害を起こします。
この子は指の付け根の骨(基節骨)が骨端線損傷を起こし、指の骨が外側(写真3では右側)に曲がってしまいました(指の骨の本来の方向は赤→)。

正確に整復しておかないとこのまま指が曲がって成長してしまい、クロスフィンガーといって手を握ったときに指がクロスしてしまう後遺症が残ってしまいます。
この子の場合は受傷から日数が経っていて簡単に整復ができないと判断し、手外科専門医を紹介させていただきました。
その後、全身麻酔下に中指基節骨の整復固定手術を受けたとのことです。

(写真3) 歳、男子、 指の基節骨の骨端線(青→)が損傷し、 指が本来の向き(赤→)よりも右側に曲がってしまいました。
以上、わかりにくい子供の骨折について、実際の症例を提示しながら解説させていただきました。

わかりにくいのはお子様の保護者様だけではなく、私たち整形外科医も骨折があるかないかの診断にとても迷うことがあります。 特に、受傷直後はX線撮影しても骨折がはっきりしない場合も多々あります。

そのような時には、受傷側ではない同じ部位のX線撮影をさせていただき、比較しながら骨折の有無を診断する場合もあります。

また、受傷時にははっきりしなくても、ギプス固定後定期的にX線撮影することにより初めて骨折だったことがわかる例もあります。 このように小児の骨折の診断は、時に非常に困難です。

場合によっては、X線検査が数回に及ぶことがあることをご理解いただきたくお願い申し上げます。