【第13回】フットボーラーズアンクル

本コラムでは、当クリニックを受診された患者様が経験されたスポーツ外傷や障害について、
その病態や治療、治るまでの期間などについて解説させていただきます。

第13回は、X線でわかるサッカーの競技歴、
フットボーラーズアンクルについて解説したいと思います。

先日、28歳の男性が私たちのクリニックに足首の痛みを訴えて来院されました。
サッカーの後に痛み出し歩行もやっとの状態で来院されましたが、
骨折や捻挫などの明らかな外傷ではなさそうでした。

足首(整形外科では足関節が正式な名称ですが)のX線撮影を行ったところ
ある典型的な所見が認められたため、私は「サッカーの御経験が長いんでしょ?」とお聞きしてみました。

すると、小学校から大学までのかなり長いサッカー競技歴をお持ちの方で、
現在でも時々プレーをされているとのことでした。

どうして、足関節のX線写真からサッカー経験が長いことがわかったかをご説明したいと思います。

写真1はこの方の足関節を真横から写したX線写真(側面像といいます)です。

(写真1)Footballer’s ankleの足関節側面像(黄→○は足関節前方の骨棘、赤→〇は足関節後方の骨棘)
足関節を構成する2つの骨(脛骨と距骨)の前方と後方に
棘(とげ)のようなものが写っているのがお分かりになるでしょうか(黄→〇 赤→〇)。

これは骨棘といい、正常な足関節側面像には写らない、
すなわち存在しない骨の突出です。

この部位の骨棘は、
別名衝撃性外骨腫またはフットボーラーズアンクル(footballer’s ankle)とも呼ばれ、
競技歴の長いサッカープレーヤーにたびたび見られる所見なのです。

ちなみに日本でポピュラーなサッカー(soccer)というスポーツは、
国際的にはフットボール(football)と呼ぶのが一般的です。
したがって、日本でいうサッカー選手(soccer player)は
国際的にはフットボーラー(footballer)と呼ばれます。

さて、それではなぜそのようなものがプレー経験の長いフットボーラーに発生するのかというと、足関節を頻繁に曲げたり伸ばしたりしているうちに脛骨と距骨が頻回に衝突するために軟骨が損傷し、それに反応して骨棘ができると考えられています。

サッカーをされたことのある方ならおわかりだと思いますが、前方の骨棘(黄→〇)はちょうどインステップキックでボールと足が当たる部分の病変なので、キックの際に痛みを伴う場合があります。

また、サッカー以外でもジャンプ動作を繰り返すスポーツ(体操、バスケットボール、バレーボールなど)やスポーツ以外でもクラシックバレエなどをされる方の場合は、足関節の後方で脛骨と距骨が衝突するため後方部分に骨棘(赤→〇)が発生しやすくなります。

フットボーラーズアンクルによる足関節痛の治療としては、
疼痛発生時にはまず安静、アイシングなどを行って炎症を取り除くことを考えます。
時には疼痛部位に局所麻酔剤などを注射することもあります。

慢性的な痛みに対しては、ホットパックなどの温熱療法や超音波、低周波などの物理療法を試みても良いでしょう。
足関節に安定性を与えるためのテーピングや装具も有効です。
以上の様な保存的治療で痛みが改善しない場合は、手術で骨棘を切除する例もあります。

私は中学1年生からサッカーを始めましたが、生まれつきの左利きで、
シュートはもちろん、ほとんどのプレーを左足で行う偏ったフットボーラーでした。
(そのようなフットボーラーは現代サッカーでは通用しませんが、昔は西ドイツ代表としてワールドカップに3度も出場したウォルフガング・オベラート選手などのように、左足しか使わないけれど世界的に有名な選手もいたんですよ)。

しかも、私は学生時代からシュート練習が大好きで、インステップキックでばかり蹴っていました(写真2)。

そして、何と60歳を超えた今でも、フットサルをほとんど左足だけでプレーしています。
怖くて自分の足関節のX線写真を撮影したことはありませんが、
私の左足はきっと立派なフットボーラーズアンクルになっていることでしょう。


(写真2)左足のインステップキックでシュートする高校サッカー選手時代の私。
当時はでこぼこの土だった母校のグラウンドは、今では人工芝の立派なサッカーコートになりました。