ADIPOSE-DERIVED STEM CELL
はじめに
近年、医療の進歩の一つに体の中の細胞を利用して治療する方法が行われてきています。
骨関節系の病気では血小板由来のPRP、骨髄や脂肪の幹細胞を利用して、骨折治療や関節炎治療に応用する治療が行われてきています。
ヒトの体内の組織を利用して治療に使用することをバイオセラピーと呼ばれるようになってきました。
変形性膝関節症に対するバイオセラピーとしてPRP治療が有名になってきましたが、幹細胞を使用する方法も行われつつあります。
ヒトの体の中には約60兆もの細胞が存在し、体の組織や器官の中で様々な役割を持ち機能しています。
その中で幹細胞(Stem Cell)といって様々な細胞に分化し組織を作る細胞があります。
幹細胞は骨髄や脂肪などに多く認められる細胞です。
外傷や病気で損失した細胞に集まって、分化、分裂を繰り返して新たな細胞を作りながら組織を修復し、組織としての機能を回復させていきます。
脂肪幹細胞は骨髄幹細胞に比べて簡便に採取しやすく、含まれる細胞数が多いのが特徴です。
細胞が軟骨などに分化する能力も高いことが分かっています。(文献 )。
関節症に対しての幹細胞の作用としては、免疫の調節作用や抗炎症作用がつよく、軟骨再生に働きかけることが分かってきています。 (文献 )
関節内に投与された幹細胞が滑膜組織に取り込まれて様々な作用を発現し、幹細胞から分泌されるエクソソームから種々の液性細胞因子(サイトカイン、成長因子)がリリースされます。(文献 )培養自家ASCの膝関節症への注入療法についての結果は、国内外から近年短期の結果が報告されてきています。 (文献 )
プライムコーストみなとみらいクリニック
院長 清水啓
ASCとは?
私たちの脂肪組織には「幹細胞」が含まれています。
これを脂肪由来幹細胞(Adipose-derived Stem Cell:ASC)といいます。


「幹細胞」の効果
多分化能 | 様々な細胞に変わることができる能力 |
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自己複製能 | 細胞自身が分裂して増殖する能力 |

ES細胞・iPS細胞との違い
ES細胞 |
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iPS細胞 |
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ASC |
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ASC治療の効果
01.抗炎症作用
ASCなどの間葉系幹細胞には痛みや腫れを抑える効果があります。
間葉系幹細胞が分泌する因子(サイトカイン)が過剰な免疫反応を抑制することで炎症が軽減されると考えられています。(パラクライン効果)02.組織の再生を促進
ASCは軟骨や血管組織などに分化する能力があり、骨や関節などの傷ついた組織を回復させることができると考えられています。
投与後に体外衝撃波療法やリハビリテーションなどを行うことでより効果的な組織の回復が見込めます。
メリット・デメリット
メリット | |
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デメリット |
治療の流れ
STEP01
問診
関節の痛みや違和感の程度、これまでに行ってきた治療についてお伺いします。ここまでは保険診療で行います。医師がASC治療の適応と判断し患者様のご同意が得られたら、脂肪採取日を予約させていただきます。
STEP02
脂肪細胞を採取
患者様ご自身のお腹や太ももなどを5~10mm程度切開し、0.5〜1g程度の脂肪組織を採取します。局所麻酔を行うので大きな痛みはありません。
STEP03
幹細胞を抽出
採取した脂肪組織は細胞培養加工センターへ送られます。その脂肪組織の中から脂肪由来幹細胞(Adipose-derived Stem Cell:ASC)を抽出します。
STEP04
幹細胞を培養
脂肪由来幹細胞(Adipose-derived Stem Cell:ASC)を数週間かけて必要な量になるまで培養します。
培養した細胞は冷凍保存され、当院へ送られてきます。STEP05
注射
培養した脂肪由来幹細胞(Adipose-derived Stem Cell:ASC)を痛みのある部位の関節腔内に注射で投与します。投与回数は治療内容に応じて1回~3回となります。
費用
本治療にかかる費用は健康保険の適用がございません。治療にかかる費用全額を患者様ご自身でご負担いただきます。
投与細胞数 | 治療費用(税込み) |
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約3,000万個×1回 | 110万円 |
約1億個×1回 | 180万円 |
約3,000万個×3回 | 200万円 |
なお、脂肪組織の採取後や細胞加工物の製造後に同意を撤回した場合など、それまでに費用が発生している場合は、発生した費用については患者様ご自身にご負担いただきますのでご了承ください。
再生医療などの
自費診療を
検討する際の注意点
- 学会や全国整形外科医により広くみとめられている標準的治療法は、保険診療範囲内の治療法です
- 保険診療範囲外の治療法ですので、自費診療扱いです
- 標準的治療法との違いを理解した上で、選択していただく新しい治療法です
- 新しい治療法であるため、治療成績で存在するのは短期成績のみです
- 適応(どのタイプの人に効くか効かないか)などは、まだ臨床研究中のため、
必然的に効果の個人差は大きくなってしまいます - 一定回数の治療でも期待した効果が得られない場合は、標準的治療法に戻っていただきます
- 脂肪の採取や細胞の投与に伴い、感染、注射部位の腫れ、痛みなどの軽微な副作用の健康被害が報告されています。しかしいずれの副作用も治癒しており、後遺症が残る可能性のあるような重大な副作用や健康被害は報告されておりません。